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【私はもうあきらめない】 ししょー

今年度、私立の中学校で外部講師として「お笑い(舞台表現)」探究講座を担当しました。他にも建築デザイン、理科実験、など5つの中から自分で一つ選び、10月の学園祭で発表するというものでした。

月に一度の50分×2コマの中で、私は漫才や落語などのお笑いだけでなく、一人芝居、テレビ番組の台本の作り方、番組のひな壇を体験してもらいました。しかし思春期真っただ中の中学2年生の子たちです。一筋縄ではいきませんでした。

自分たちで私のゼミを選んできた男女3人ずつの計6人だったのですが、授業が始まっても教室の後方に男子は男子、女子は女子だけで固まって座り私語。出した課題もやってこない、途中で保健室に行くといって帰ってこないことも。中には学園祭の一ヵ月前に転校してしまった子もいて、こんな状態で、学園祭で発表なんてできるのか?と頭を抱えていました。そこで私がMC、生徒5人はひな壇に座って企画コーナーを行い、その様子をカメラで撮影し番組として制作。当日誰もやれませんと言い出したときの保険として、です。

学園祭に向けての企画会議で落語をやりたいといった生徒が3人いました。しかし本番一週間前のゼミでは、誰一人セリフを覚えておらず、その内の一人は「死神」という古典落語を現代風にアレンジすると言って台本作りを始め…。

学園祭当日。私は教え子の初舞台を見る緊張と怖さで、正直足取りが重く、誰かが恥をかくのを見たくないという気持ちで胸が締めつけられていました。まずは「まんじゅう怖い」という古典落語。

(声…は小さい。セリフ…もたどたどしい。
あれ、でも今笑いが起こった?!ウケてる!?)

結果的に落語も、放映した番組も生徒たちや保護者、先生にもちゃんと届き、会場は爆笑に包まれました。安堵すると同時に「あ、ちゃんと信じてあげればよかったな」と私は胸が痛みました。

番組をみんなで見ているときも拍手が起こったり、視聴者参加型で番組を楽しんだり、この学校の面白がる力は4月に比べて格段に上がったなと嬉しくなりました。ちなみにまんじゅう怖いという落語をやったSくんに「ウケたな!面白かったよ!」と声をかけると「恥を捨ててやりました!」と興奮気味に話していました。

私は、心に決めました。私が子どもに対して絶対にあきらめないと。私が子どもをあきらめちゃだめだと。私だけでも最後まで信じてあげたい。

また同月、特別支援学級に通う中学生40名が一泊二日の校外学習の中で、夜のお楽しみ会として、1時間の落語の依頼をいただきました。事前の打ち合わせでは、みんなそれぞれに症状を抱えていて、同い年の子に比べると理解力も低いかもしれない、と聞いていました。たぶん誰も手は挙げられないし、反応も薄いと思いますと言われ、落語を聞いてイメージしてほしいけど、まず座っていられるかどうか…と。担当窓口ではない先生からは「今日初めて会う関係性ができてない人だし、集中力は15分持たない」とまで言われました。
私は予定通り1時間落語をやりました。途中誰一人離席することもなく、落語に夢中になり、大笑いしていました。途中のクイズも全員が参加。終了後は記念撮影やサイン会まで。驚く先生方。  
私はただ子どもを信じていただけ。そしてひとりひとりが愛おしくてたまらなかっただけ。

私は漫才教育でも、落語教育でも子どもひとりひとりの成長を信じています。

一般社団法人Lauqhter ピン芸人かける