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【百コマ分の価値がある授業とは?】じゅげむ


「一コマの授業に百コマ分の価値がある」

小学校へ落語教育の授業をしに行ったとき、校長先生に言われた言葉です。青森県青森市にある小学校から、落語教育の授業の依頼をいただきました。5年生の国語の伝統文化の単元で、落語をほぼ初めて観る子達のために、落語と親しむ時間を作りました。落語を聞いたり自分でオリジナルのくすぐりを考えたり。初めての落語に笑い声が上がり、楽しんでいた様子。ところが全体で発表してみよう!というと、10歳という思春期の入口という年齢や地域柄もあってか、前に出ようとする子は少ない印象でした。

今回「通級」(障害による学習上又は生活上の困難を克服するため、その障害の状態 に応じて「特別な教育課程」による指導を行う教育形態を指し、「通級」と呼びます)の子達も一緒に受けたい!とのことで落語の授業を5年生のクラスのみんなと一緒に受けていました。通級クラスの子達は1年生から6年生まで居るのですが、私の落語教育は、どの学年でも対応できるようになっており、みんな楽しんでいました。「さぁ、ここで落語を挑戦してみたい人ー?」と聞くと、5年生は手が上がらず、通級の子達の手が勢いよく上がります。高座に上がり、座布団に座って実際に話をしてみる時間。恥ずかしがった5年生達、その中で堂々と通級の子達が高座に上がり、自分の考えた落語を披露します。しかもこれがとても面白い。笑い声が上がり、終わった後は拍手喝采でした。

彼等は何が良かったのか。それは、「堂々とやり切ったこと」でした。恥ずかしがって中途半端に終えたり笑ったり、そもそも「やってみる」という挑戦に躊躇すると何も進みません。やるからには堂々とやり切ること。これを5年生は目を丸くして見ていました。普段の生活の中ではスポットがなかなか当たり辛い子達も、こうやって人を笑わせることができたり、怖気付くことなく、堂々演じ切ることができたり。表現活動が彼らをより輝かせるものにもなるのです。

「彼等の輝きが見られた、たった一コマの授業に、百コマ分の価値がある素晴らしい授業だった
よ。ありがとう」

校長先生から言われた言葉です。落語教育をやり続け、この活動をしてきて本当に良かったなと思った瞬間でした。落語教育によって救われる子達が必ずいます。この環境を全国各地で作っていくのが、私楽亭じゅげむの役割です。

楽亭じゅげむ