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教員研修@神奈川県立舞岡高等学校様

この度、落語で学ぶ教員研修を行いました!
演題は「落語で学ぶ、教室にいる『はみ出し者』とどう向き合うか」
落語に出てくる人たちは「はみ出し者」でも排除されることなく、周りが面白り、愛し、受け入れる。
その思考を「落語思考」と呼んでいます。
今回は高等学校の教員の皆様へ「落語思考」を身につけてもらうべく、教員研修としてお伺いいたしました。
落語から学べる教育的視点が増え、楽しさ満点!そして教員同士が仲良くなる?
どんな内容の研修なのかお伝えしてまいります!

【詳細】
 ❀ 日時:12月5日(月) 13:30〜15:30
 ❀ 場所:神奈川県立舞岡高等学校 多目的ホール
 ❀ 対象:教員15名ほど
 ❀ 演題:「落語で学ぶ教室にいる『はみ出し者』の向き合い方」
 ❀ 狙い:教室に居る「はみ出し者」を否定するのではなく、視点を変えて面白がる力、受け止める方法を「落語」という教材を通して学ぶ。

目次

研修開催の経緯と研修の狙い

 組織の中に居る「はみ出し者」を否定してしまうマインドは、教員や生徒、会社組織、どこにでも存在してしまうのではないでしょうか。
「否定をしないで周りが面白がり、受け入れる」
このマインドを特に教員に持ってほしい!と言っていらっしゃった、舞岡高等学校の野澤先生と廣先生。
実は廣先生は大の落語ファンで「落語に出てくる人物達は、はみ出し者が出てきても否定をしないで受け止めて笑いにするんです」
と私達、一般社団法人Lauqhterの掲げている理念をおっしゃっていました。
 
「ぜひ落語を使って、先生達にこの落語に出てくる人達の考え方、『落語思考』に馴染んでもらいましょう!」

とお話した結果今回の教員研修開催となりました。
今回、私外部講師だけでなく、現場の先生の声をお伺いしながら研修を作りました。
研修当日も廣先生と共にT2での授業開催。
これが本当に素晴らしい時間になりました。

お写真は廣先生と「談志ポーズ」です!!

研修の流れ

 「はみ出し者とどう向き合うか」ということを落語をテーマに話していくことをお伝えし、研修スタート。

①「呼ばれたい名前」で自己紹介
子ども達のワークショップではいつも好きな単語を入れて芸名を付けてもらう時間。
芸名を作っても、普段呼ばれているあだ名でも、今日呼ばれたい名前でも大丈夫とお伝えし、ご自身に決めてもらいスタートしました。
・はあさん (お名前の頭文字から)
・小田原亭 でんちゃん (住まいの電車名から)
・たーくん (教頭先生!私じゅげむの初恋の人の名前!笑)
・ウィルソン (高校生の時のあだ名)
 
年上年下、役職関係なく、あだ名で呼び合う時間としました。
意見が出しやすいようにという意図、そしてあだ名で呼び合うことで心がぐーんと縮まっていきます。
小さい時のあだ名をつけられた方が多いので、学生の時のわくわく感が表情に出てくるので、お名前を呼ぶ瞬間、私もワクワクします!
 
②小噺を聞く
落語が初めての人もいらっしゃるので、急に落語の噺に入るのではなく、まずは小噺でウォーキングアップ。
クスっと笑えるくすぐりやオチの構造、そそっかしい人物が出てくると落語が始まる、ということを短い噺で聞きなれ、落語思考モードにしていきました。

③教師目線の落語思考
ここからは落語のあらすじを聞き、途中で登場人物の言動について考えてもらう問いを立てます。
みなさんだったらこの時どうしますか?と。
自分ならと考えた後に落語の人物の斜め上からくる発想、否定をしないキャラクターの達の言動から「落語思考」を学べるような内容にしました。
「教師目線」というのは、落語の世界で喧嘩が勃発していたり、仕事をさぼってこっそりお酒を飲んでいたり…生徒だと必ず指導が入る場面が出てくる落語を取り上げ、教師目線でどう対応するかを考えてもらいました。
学校での出来事と重ねて考えられる噺を他にも選び、いろいろな噺から「落語思考」に馴染んでいってもらいます。
 
④粗忽者の受け止め方
休憩を挟んで、「粗忽者(そそっかしい者)」今回で言う「はみ出し者」をどう受け止めるか、という時間を送りしました。
ダメな人でも切り捨てない。その思考が落語の演目にヒントがたくさんあるのです。
この時間も落語のあらすじを聞き、途中で登場人物の言動について考えてもらう問いを立てて、みんなで粗忽者に触れ、この時間にはもう、「はみ出し者」の受け止め方が徐々に変わってきていることを、講師としても感じました。

⑤まとめ
キャラクター達の「はみ出し者の受け止め方」を
教室の「はみ出し者」の価値観がガラっと変わった時間になったように感じています。

扱った落語の演目@二番煎じ

あらすじを伝え、自分ならどうするかを考えてもらいました。
 
❀ 二番煎じ (教員目線で)
 ある冬の晩、番太が年末休みのため(東京では「番太だけでは心もとない」というので)、防火のための夜回りを町内の旦那衆が代わりに行うことになった。厳しい寒さに耐えながら夜回りをした一同は番小屋で火鉢を囲んで暖をとる。ある者は酒を持ち込み、ある者は猪の肉と鍋を持ち込み、即席の酒宴が始まる。その時、番小屋を管轄している廻り方同心が小屋の様子を見に来る。旦那衆のひとりが火鉢の上に座って鍋を隠すが、酒は隠しきれなかった。旦那衆のひとりが「これは酒ではなく煎じ薬だ」と言うと…

Q:みなさんが同心ならどう考えますか?

Q:「薬だ」と聞いた同心はどんな言動を起こしたでしょうか?

「酒だろう!」「何やってんだやめなさい!」というのがスタンダード。
頭ごなしに叱るとこちらの労力もすり減ってしまう。
ここで同心の考え方に触れてもらいます。
同心はこの後、「薬なのか!そうか!」と言いながら一緒にお酒を飲みます。
鍋の存在にも気づき、一緒に宴会を楽しみます。
その後酒を飲みほし、旦那衆は「もうありません!」と言います。
同心の最後のセリフは「では見回りに行っている間に二番を煎じておけ!」という展開で終わります。
 
頭ごなしに叱るのではなく、みんなの輪に入ってしまうという展開に面白さと、そうすることで、「悪いことしてしまった…」と自ら省みる時間になることも。そして、こんな先生いたら慕われるんじゃないかと感じます。
本当に一緒に飲んでしまうのは少しリスキーではあるので、あくまで「考え方」としてお伝えしています。

扱った落語の演目@化け物づかい

 本所の割下水に住む元御家人で一人暮らしの隠居の吉田さんは、人使いが荒く使用人が居つかない。とある日、隠居は化物屋敷と噂される家に引っ越すことになった。人使いが荒い上に、化物屋敷では千束屋に頼んでも使用人など来るはずがない。夜が更けると、背中がぞくぞくっとしたと思ったら、お待ちかねのお化け、一つ目小僧の登場…

Q:化け物が出てきた時、どうしますか?

Q:隠居の吉田さんはどのようなことをした?

「でていけ~!」とおびえ、追い払うのがスタンダードではないでしょうか。
吉田んさんはどうしたか。
「おお!肩たたいてくれるか」「お前は背が高いから屋根を直してくれ」
と言って、化け物を使い出します。
使用人が居ないなら、化け物を使ってしまおうという発想です。
化け物は使われ、しまいには
「お暇をください。こんなに化け物使いが荒くては辛抱できません」というオチに。
 
化け物を良いように使い、結果的に出ていってしまいました。
拒否や否定をするのではなく、受け入れて使ってしまう。
人間ではない「はみ出し者」をこのような発想で受け入れるというとこと、ご隠居の吉田さんから学ばせてもらえるなぁと感じる部分です。

幇間というキャラクターについて

 自主性が無い、意思がないキャラクターなのではなく、相手を気持ちよくするためどんな会話を合わせる人物。江戸時代、当時は相手を「会話で」持ち上げて気持ち良くし、それでご飯を食べていた「幇間(太鼓持ち)」というお仕事がありました。
その紹介と合わせて、「隣の人と旦那役と幇間役を決めて会話をしてみましょう!」と落語のキャラクターになり切ってもらういます。
これが大盛り上がり。
先生達の仲がこれまたぐーんと仲良くなっていったように感じました。
 
生徒の中でも相手に意見を合わせ続ける子がいるかもしれません。
「意思が無い!」というとらえ方ではなく、それは相手を気持ちよくする大きな武器になっている可能性もあります。
それはダメというのではなく、「武器になるかも」そういう視点で生徒を見てほしいという思いで、太鼓持ちになり切ってもらいました。

受講した先生方の感想

 先生方から研修を受講した感想をいただきました。
素晴らしいお言葉がたくさん、「はみ出し者」の受け取り方がこんなにも変わっていきました。

はみ出し者のイメージ

「はみ出し者とは?」研修を受ける前と後での違いについてのご感想
 
前:変な子・おかしい子・なんか持ってる子・空気が読めない子
後:はみ出し者なんていない?全員包み込めばはみ出し0 「枠」があるからはみ出すのであって、枠関係なく包み込めば、誰もはみ出さないと思った。

前:授業ほか学校生活に意味を見出していない生徒
後:周りとは一味違う存在、思ってもみないような解決策を出せる人物

前:「負」のイメージ
後:周りの者が「負」のイメージを作ってしまっていることなんだと改めて気付きました。
 
【はみ出し者とは?】
悪気があって和を乱そうとしているのではなく、本人は至って真面目なので、その点を理解して接するべき存在である。
 
全体を通して、最初は負だと思っていた方が多い印象。
負というのは、こちらがそう思うだけであり、捉え方を変えれば大きな武器になる、ということがこの研修で伝わったんだとこの感想から感じられます。
「悪気が無いことをしているのだと理解する」というのが今回の大きなキーワード。
引き続き、この考え方で生徒達と過ごしてほしいです!

研修全体の感想

研修を受けた先生方からのお言葉です。

❀ 目線を変えて物事を見ることの大切さに改めて気付くことができました。また、研修自体が職員どうしのコミュニケーションを高めることにもなり、参加してとても良かったです。
 
❀ 普通の生活でははみ出し者でも、落語の中なら主人公になり、面白い話になると知り、興味深いと思った。

❀ 正面から考えたらわからないことを別の方向から見ることの大切さを改めて感じました。
 
❀ 非常にためになることばかりで、勉強になりました。必ずどこかで活かせるように、今日の学びを忘れないようにします!!
 
中でも印象的だったのが、今回落語の演目を6つご紹介。
その中でそれぞれの演目に出てくるキャラクターの「はみ出し度」を★5つでキャラクターに合わせて星の色を塗ってもらいました。
はみ出し度合いの大きいキャラクターが出てくる演目を後半に置いていたので、
星の数がだんだん上がっていくだろうと思っていたら逆に星の数が減った方が居ました。
聞いてみると、「最初はみ出し方に驚いたけど、はみ出している人物に触れている中でそのはみ出しが普通に思えてきました」
という感想がありました…!
まさに「落語思考」になっていったという証拠!
私達の届けたいものがしっかり伝わったことを感じました。
 
全体の満足度はなんと100%。
2時間の研修で寝ていた方は一人もいませんでした。
皆さんが前のめりに楽しんでくださり、学んでくださったことが感じられた研修でした。

一緒に作り上げた先生たちからの感想

今回の研修は私だけではなく、現場の先生方と作成いたしました。
作成いただいた先生達から

❀ ベテランの先生も若手の先生も、関係なくフラットに楽しんでいたのがとてもよかった!

❀ 教育研修なのではなく、かけ離れてもいない「落語」というものを用いた研修だったのが良かった。

❀ コミュニケーションズが取れて、仲が深まっていったことがよく伝わってきた。

❀ 外部講師だけの知識ではなく、また身内の先生だけの内々だけでなく、双方のバランスが良かった。
 
一緒に作り上げられたからこそ、ここまでみんなが納得のいく内容をお送りでいたように感じています。
このような場をくださった先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。

感謝のお言葉

今回、のざ(野澤先生)がこのようなきっかけをいただきました。
繋いでくれたたなしょー(田中渉悟)くん、この日までに何度も打ち合わせを行い、
素晴らしい研修を一緒に作り上げてくれた、与太(廣先生)、のざ(野澤先生)、
今回の研修を受け入れてくださった「どうは亭かんき」こと校長先生、
研修を受けてくださいました先生方、
きむ・はーさん・おだわら亭でんちゃん・たーくん(教頭先生)・かずいし・うぃるそん・せいのしん・まっさん・とくさん・にーに・たけでぃ

皆様ありがとうございました!!

教員研修やります!!

教員の資質として必要な「個性を受け入れる術」を落語を通してお伝えしました。
ダメを排除するのではなく、面白がり、受け入れる力。
今回は教員向けで開催をしましたが、生徒にも、そしてどんな組織でも必要な考え方だと感じています。
「落語思考、うちの組織にも!」という方は是非ご連絡ください。
落語を扱った教育教材は、当法人が一番面白く、一番学びある時間を提供いたします。