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幼稚園芸術鑑賞 落語講演

埼玉県のとある幼稚園の園児に向けて、先日落語会を行いました。私自身4歳~の幼児期の子どもたちに落語をするのは初めてで、反応が読めずドキドキでしたが、思った以上に落語を楽しんでくれました。

◆形式
移動時間も合わせて30分の枠で年少、年中、年長の3コマでの開催。普段のイベントは地域の人たちも保護者も呼んで250名集まるそうですが、今年は対策のため、園のホールに1学年ずつと先生、PTA役員の方々に見ていただきました。
コロナが落ち着いたら是非またその規模でも講演させてくださいね!

◆内容と子どもたちの反応
年少クラスには、扇子と手ぬぐいを使った仕草クイズを3つとネタを披露。いつもここでやるのが、「手紙を書く」「お蕎麦をすする」「まんじゅうを食べる」皆で真似をして、落語を1席聞いていただきます。
「手紙を書く」というのは、年少さんは馴染みが無いかもしれないと思い、急遽「絵を書く」に変えました。ここで伝えたいのは、「扇子」と「手ぬぐい」が別のものになっている、ということ。手ぬぐいが紙に、扇子がクレヨンになっていたことを確認。「お蕎麦をすする」を皆でやってみましたが、やはり真似をする活動は幼児期にピッタリ。真似をしつつも、大きく表現したり、自分なりの啜り方があり、それぞれの表現の魅力が出てきました。子ども1人をピックアップし、座布団の上でそばを啜る仕草を演じてもらいます。人前に立つこと、笑い声を浴びる経験を得ます。笑い声や拍手がその後の彼らの背中を押してくれる糧となることを感じました。

落語一席は「動物園」を演じて聞いてもらいました。元々イギリス発祥のお話。海外の人にも老若男女、皆が楽しめる演目です。学生時代、落語の先輩が4歳児に「動物園」を演じられていたことを思い出しながら、本筋に沿って分かりやすい笑いを入れて行いました。
虎の毛皮を来て虎になり切って動き回るシーンでは、
落語「トラってどうやって歩くんやっけ?…こうかな?」
子ども「違うー!!!笑」
落語「トラってどうやって鳴くんや?…ニャー!」
子ども「違うー!!!笑」
この辺りで、大盛り上がり、興奮状態。
話の筋があるので、どんどん進んで行きたいが、少し長めに笑い待ちもしたいところ。声と動きを大小を変えながら少しずつ進んでいきました。

年中クラスでも大枠は似た反応。要所要所話を聞きたい!という様子が年少クラスより増えている印象でした。さっきのクラスでの「まんじゅう」の反応が薄かったので、「焼き芋」に変更。屋台で売っている様子から演じ、食べるシーンを見せる。「熱い…!!」と熱がる場面では、子どもたちも大笑い。楽しそうに演じていました。

年長クラスでは、園長先生に「寿限無が聞きたい!」と仰ってくださり、急遽寿限無に変更しました。物語の中のお母さんやお父さんが長い名前を言うシーンでは子どもたちも大笑い。話の筋をしっかり理解して笑っていました。お蕎麦をすする真似の時間は、最後園長先生が手を挙げて「やりたい!」と!高座でやっていただいき、子どもたちは大爆笑。子どもたちが高座に上がって蕎麦を啜る時には私も横について一緒に動きを確認しながら行いました。大人は無くてもできるところ、「じゅげむ先生、教えてください」と言い、同じように横に動きを確認しながら行われ、この姿に私は感動しました。先生が演じることもそうですが、大人も子どもたちと同じようにやってみることで子どもと同じ視点に立ちつつも、素晴らしい見本とユーモアを見せてくださいました。

◆園長先生とお話をして
「年少さんが、あんなに楽しめるとは思ってなかった。思った以上に話も聞けていて驚いたよ。」私もそう感じました。3コマ見てくださり、「気づきがいっぱいあった。」とお話くださいました。

①蕎麦を知らない子どもたち
蕎麦をすするクイズでは「ラーメン!」と答える子どもたちがほぼ全員。最近小学生の前で演じる時にも「ラーメン!」という回答が多いのです。園長先生が「今の子達はね、蕎麦を食べないんですよ。ラーメンか、うどん。蕎麦は茹でるのが大変だからお母さん達作らないんだって。お蕎麦は昔のファーストフードだったのに。ファーストフードが変わって来てるわけですよ。
私が鉛筆を持つ習慣がない子どもたちに、普段行っている「絵を描く」ならピンと来るかな、と変えてみたのと同じだと感じました。発達時期だけでなく、日常に直ぐに結びつくものは、時代によって変わる。落語に触れたからこそ知れたことでした。

②名前の話
年長クラスの落語のお話「寿限無」のまくらでは「昔は子どもが生まれたらお寺の和尚さんに名前を付けてもらうことが多かったそう!めでたい名前を付けてもらいたいというお父さんの思いが込められたお話だよ!名前がある人??」「はーい!」「名前がない人ー?」「…」「居ないよね…!!」
話を聞く前の発散として手を挙げてもらったり、話に馴染みを持たせるためにこのようなまくらを言った。
園長先生「ほんと偶然なんだけどね。昨日お誕生日会で名前の話をしたの。お父さんお母さんが思いを込めて付けてくれているんだよ。名前の無い人ー?…いないよね。って話したの。それを今日七海さんも言ってくれたから『ああ、そう言えば昨日園長先生が言ってたな』って思い出せるでしょ?1回限りじゃだめなのよね。そうやって思い出せたらまた家で名前の話もできると思うんだ。まさかだったよ。」
急遽「寿限無が聞きたい!」と仰ったのでそういう意図があったのか尋ねたら、本当に偶然。「打ち合わせもしてないし、まさか七海さんが言ってくれると思わなかったから驚いたよ!」とのことこでした。
今回は偶然でしたが、今後、他の園や小学校にて落語講演をする打ち合わせの際に、「今先生が子どもたちに主に伝えていること、つけたい力」を聴いてもいいなと感じました。先生以外の人も言ってることの説得力は生まれ、外部の先生だからこそできることだと感じました。

③「読み書き学習」の前の土壌作り
園長先生「今日のような活動、読み書きじゃない土壌を作ることが1番なのよ。今耕しておくことが大切。『読み書きだ!勉強だ!』そこが1番大切だと思ってるお母さん達が可哀想なんだよ。」
体を動かす、音楽を聞く、友達と触れ合う、落語に触れる、新しい世界を知る…
感性を豊かにし、土壌を耕す。その上に考える力や、学習へ向かう姿勢が整っていくのです。落語は土壌を耕すのに持ってこいだなとお話をしていて感じました。

今回私自身の土壌も耕されました。何より落語に食いついている子どもたちの顔が忘れられません。
今後も様々な場所で子どもたちに落語を通して心の土壌を耕し、笑いを提供してまいります。